日本DDS学会第37年会において、若手ワークショップ「腸内細菌叢の共生原理に学ぶDDS」を、領域共催として令和3年6月29日に開催いたしました。
https://procomu.jp/dds2021/pdf/dds32_wakate.pdf
本ワークショップは、冒頭にオーガナイザーである池田豊先生(筑波大学)よる趣旨説明、次いで同じくオーガナイザーである森(計画研究班A03-1)より、物質共生領域の概要紹がなされました。
一人目の講演者の宮本潤基先生(東京農工大学)は、「脂肪酸受容体とエネルギー代謝調節」と題して、腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸が複数のGPCRを介して生体の恒常性維持に影響していることに関して、ご自身のデータを含めて最新の知見を紹介されました。二人目の森は、「腸内細菌を抗生物質から保護するDDSの開発」と題して、投与された抗生物質が大腸に到達して腸内細菌を破壊することを防ぐための吸着剤の開発について講演しました。三人目のBabita Shasni先生(筑波大学)は「Metabolizable PEG-poly(vinyl ester) based self-assembling nanoparticle for the therapeutics of various disease」と題して、短鎖脂肪酸を含むミセル状集合体を経口投与することにより、これが血液循環に入って短鎖脂肪酸を徐放することにより、糖尿病、炎症性腸疾患、がんの転移などの種々の疾患に効果を示すという興味深い成果を報告されました。四人目の北本祥先生(ミシガン大学)は、炎症性腸疾患を引き起こす大腸菌が特定のアミノ酸をもとに増殖することを見出され、これを欠損した食餌を与えることにより、炎症性腸疾患を治療できることを示されました。
参加者は、オンサイトとオンラインの参加者合わせて約50名程度でした。DDSの研究者にとって腸内細菌はなじみの少ない分野ですが、この新しい分野に興味を持たれた参加者から、活発に質疑応答がなされました。今後、このシンポジウムで得た知見や議論が、領域の研究推進に貢献することが期待されます。
(オーガナイザーの池田先生と森)