計画研究

A01: 「弱い相互作用」の測定拠点

A01-1 弱い相互作用のインターフェースの可視化と生体応答の同時イメージング

本計画研究では、マテリアルが最初に接触するインターフェースである細胞膜を「まるごと」、高速ライブセルAFMを用いて、その挙動を含めてナノスケールで可視化する。同時に膜上で生じるマテリアル−細胞相互作用により、細胞膜直下、細胞内および各オルガネラ等で生じる細胞応答を、蛍光バイオイメージングで同時観察する。このcorrelative imagingにより、相互作用の強弱が、「拒絶」「ステルス(回避)」「寛容」のいずれを導くか、そのプロセスをデコードし、物質共生との関係性を明らかにする。
参考:Youtubeチャンネル「細胞動態実験室の顕微鏡」

  • 代表者
    大場 雄介
    北海道大学 大学院医学研究院 教授
  • 研究協力者
    藤岡 容一朗
    北海道大学 大学院医学研究院 准教授
  • 研究協力者
    天野 麻穂
    北海道大学 大学院医学研究院 特任准教授
  • 研究協力者
    吉田 藍子
    北海道大学 大学院医学研究院 助教
  • 研究協力者
    柏木 彩花
    北海道大学 大学院医学研究院 助教
  • 研究協力者
    釜崎 とも子
    北海道大学 大学院医学研究院 特任助教
  • 研究協力者
    佐藤 絢
    北海道大学 大学院医学研究院 博士研究員

A01-2 細胞表面蛋白質の弱い分子認識の定量化・構造解析

本計画研究では、「免疫系細胞表面受容体」と「生理的リガンド」あるいは「人工マテリアル」との結合様式や物性の違いについて網羅的に解析し、マテリアル・シンバイオシスの成立に必須な物理化学的特徴、構造的特徴を抽出可能な測定系を構築する。免疫系細胞表面受容体とマテリアルは「弱く速い」動的な複合体を形成すると考えられる。複数の物理化学的測定とX線結晶構造解析、小角X線散乱、クライオ電顕などを組み合わせ、物質共生を巧妙に調整する分子基盤を解明する。

  • 代表者
    前仲 勝実
    北海道大学 大学院薬学研究院 教授
  • 分担者
    望月 慎一
    北九州市立大学 国際環境工学部 准教授

A02: 「弱い相互作用」を基盤とした生体反応解明拠点

A02-1 非天然核酸が誘導する免疫惹起機構と「弱い相互作用」の解明

高度に最適化された抗体医薬や核酸医薬をはじめ、多くのバイオ医薬品において免疫原性が認められ、これを回避するのは現状ではほぼ不可能と言える。本計画研究では、これらの機能性分子が「なぜ免疫原性を示すのか?」について分子レベルで解明することにより、物理化学的シンバイオティック・パラメーターを取りまとめ、真の物質共生のための理論構築を目指す。特に非天然核酸が免疫原性を引き起こしうる生体間相互作用に着目し、定量的に解析することを通して、物質共生に関与する「弱い相互作用」の理論的基盤を構築する。

  • 代表者
    山吉 麻子
    東京工業大学 生命理工学院 教授
  • 分担者
    山本 剛史
    長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 准教授
  • 分担者
    植畑 拓也
    京都大学 大学院医学研究科 助教
  • 研究協力者
    三瓶 悠
    長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 助教

A02-2 合成高分子と生体分子との弱相互作用を起点とする生体応答の解明

本計画研究の目的は、代表的な生体親和性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)が、「なぜ抗PEG抗体産生を引き起こし、生体排除を受けるのか?」を問い、これに対して、PEGと抗PEG抗体間の「弱い相互作用」の定量解析からシンバイオティックパラメータを明らかにすることである。抗PEG抗体のPEGに対する結合親和性は非常に弱いが、この様な「弱い相互作用」を分子的視点と合わせて物理化学的に解析することで、生体親和性高分子に代表される「高分子」を、生体はどのように認識するのかを解明し、領域の推進に貢献する。

  • 代表者
    白石 貢一
    東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 准教授
  • 研究協力者
    Debabrata Maiti
    東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 博士研究員

A03: 「弱い相互作用」を利用するマテリアル創製拠点

A03-1 腸内共生系における弱い相互作用の理解と材料共生への応用

我々の腸管には絶えず無害な食物抗原が流入するとともに、多数の腸内細菌が共生している。腸管はこうした無害な抗原に対し積極的に『免疫寛容(トレランス)』を誘導できる特殊な器官と言える。本計画研究では、腸管粘膜における弱い相互作用の理解を通じて、物質と生体の共生を促す次世代経口免疫製剤『トレロソーム』の創製を目指す。トレロソームとは、腸管内において寛容雰囲気下での抗原提示を行うことで、免疫寛容を担う制御性T細胞(Treg細胞)への分化を促すナノ粒子製剤である。本製剤には抗原タンパク質と申請者が見出したTreg誘導物質を共内包することで、抗原特異的なTreg細胞の高効率な誘導を実現する。

  • 代表者
    森 健
    九州大学 大学院工学研究院 准教授
  • 分担者
    長谷 耕二
    慶應義塾大学 薬学部 教授
  • 高橋さん
    研究協力者
    髙橋 大輔
    慶應義塾大学 薬学部 専任講師
  • 研究協力者
    村上 大輔
    九州大学 大学院医学研究院 講師
  • 研究協力者
    新居 輝樹
    九州大学 大学院工学研究院 助教
  • 研究協力者
    Mazaya Najmina
    九州大学 大学院工学研究院 博士研究員

A03-2 弱い相互作用を実現する生体模倣ポリマーの開発と免疫寛容の検証

近年の免疫治療学分野では、抗体のような標的分子と強く相互作用する分子ではなく、弱い相互作用に基づいて共生状態を調整している分子が大いに注目を集めている。例えば、細胞がアポトーシスを起こすと、細胞膜の内側に局在化しているフォスファチジルセリン(PS)が外側に露呈されるが、このとき免疫細胞側には、PSによって抗炎症シグナルなどが誘導されることが知られている。本計画研究では、これまで研究代表者が独自に開発を進めてきたPSを模倣した合成ポリマー(MPSポリマー)を基盤とした新たなシンバイオティック・マテリアルの創製を目指す。

  • 代表者
    荏原 充宏
    物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター スマートポリマーグループ グループリーダー
  • 分担者
    宇都 甲一郎
    物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター スマートポリマーグループ 独立研究者